東日本大震災被災地域のインフラ復旧支援とメンテナンス技術拠点の形成に向けた研究開発事業に着手

平成24年3月1日
国立大学法人東北大学
東日本高速道路株式会社東北支社
株式会社ネクスコ・エンジニアリング東北
株式会社復建技術コンサルタント

 国立大学法人東北大学(仙台市青葉区)、東日本高速道路株式会社東北支社(仙台市青葉区)、株式会社ネクスコ・エンジニアリング東北(仙台市青葉区)及び株式会社復建技術コンサルタント(仙台市青葉区)らは、研究体(コンソーシアム)を形成し、IT融合による被災地のインフラ復旧支援と、社会インフラのメンテナンス技術拠点整備の事業に共同で取り組みます。

 同研究体の企画提案が、2月27日、経済産業省事業「平成23年度補正予算IT融合による新産業創出のための研究開発事業(産学官IT融合コンソーシアム拠点の整備)」に採択され、今年度中に事業に着手します。

【実施体制(コンソーシアム)】

研究機関 国立大学法人東北大学(仙台市青葉区)
国立大学法人東京大学(東京都文京区)
インフラ関連 東日本高速道路株式会社東北支社(仙台市青葉区)
株式会社ネクスコ・エンジニアリング東北(仙台市青葉区)
株式会社復建技術コンサルタント(仙台市青葉区)
IT関連 ムラタオフィス株式会社(札幌市中央区)
株式会社ユーシーテクノロジ(東京都品川区)

【事業の概要】

 インフラの専門家とITの専門家が、構造物の損傷評価、劣化予測、補修計画等のインフラメンテナンスのノウハウと、情報の自動収集・共有、画像等の大容量情報の解析等のITのノウハウを融合した新たな事業モデルを構築することにより、東日本大震災被災地域のインフラ復旧支援、メンテナンス技術拠点の形成・展開を図るとともに、同事業の成果を核とした事業展開を目指します。

◯ 被災地のインフラ復旧支援

 復旧支援と構造物の点検業務に着目し、GPSなどを活用し、点検情報に効率的に位置情報を記録する端末、画像処理技術等を活用し損傷判定の効率化や判定結果の編集・記録を容易にするシステム、構造物の状態を蓄積するデータベースの整備を通じて、インフラの早期復旧を支援します。

◯ メンテナンス技術拠点の形成・展開

 被災地で起きている現象とその対策など、貴重な事例と経験を蓄積し、技術者育成用の教材としてアーカイブするとともに、国立大学法人東北大学が中心となって東北地方の関連機関と協力し、ノウハウやデータを共有する仕組みを整備、各方面の知見を集積、高度化し、活用できるシステムを構築することにより、メンテナンス技術拠点を形成します。

◯ 本事業を核とする事業展開

 以上の成果は、東北地方のインフラ復旧・復興支援に大きく寄与するだけでなく、蓄積されたノウハウは、日常的なインフラの維持管理や今後発生する災害にも対応可能であり、わが国において将来急速に市場の拡大が予想されるインフラのメンテナンス分野における新事業として有望です。こうした市場を視野に、同研究体では、本事業の研究開発成果を核として、事業展開を図る予定です。

【運用のイメージ】

 本事業では開発するシステムを被災地で実際に運用・実証します。運用のイメージを以下に示します。

【事業の背景】

(1)東日本大震災地域のインフラ復旧に向けた効率的対応の必要性

 被災地域のインフラは、地震や津波の外力により施設が急激に劣化・損傷した状況であり、被害状況の正確な把握と的確な対応策が不可欠となっています。例えば、震災直後は軽微な損傷であったものが、震災後半年が経過し、津波による海水浸水に起因した橋梁鉄筋の腐食の進行、地盤沈下に伴う浸水域の拡大、台風豪雨による道路盛土材の流出等、時間と共に被害が拡大する事例も発生しています。インフラの安全確保には損傷の早期発見・対応が重要ですが、対象が広範囲に及び判断に技術力を要するため、多くの地域で対策が進まず課題が山積しています。特に小規模な自治体では、財政的にも安全性の確保とコストの削減を両立できる効率的な対応が切望されています。

 本事業は、現場の点検業務の効率化と正確性の向上を図るものであり、効率化を通じてコストの削減も実現できますので、開発成果が自治体等に導入されることにより、以上の課題解決に貢献できると考えられます。

(2)急速に進むインフラの老朽化

 わが国のインフラの老朽化は急速に進みつつあります。例えば、老朽橋(50年以上)は現在12%のところ、20年後は48%に増加(4倍)し、その維持管理費用は現在、年間で約5.4兆円を要しているところ、20年後は約7.8兆円に増大(1.4倍)します(国交省推計)。一方、技術者は急速に減少する見通しで、現在260万人のところ、20年後は210万人と減少(0.8倍)します(文科省推計)。このように、インフラの維持管理に関する技術力の維持、安全性の確保とコストの削減は、わが国の喫緊の課題となっています。また、こうした課題は、近年急速にインフラを整備している途上国でも今後、顕在化することが予想されます。

【用語解説】

  • アセットマネジメント 広義には、投資用資産の管理を実際の所有者に代行して行う業務のことであるが、ここでは橋梁等の社会資本の維持補修のための投資を効率的かつ適切に配分すること。
  • インフラの長寿命化 インフラの老朽化は止められないが、壊れてから補修するのではなく、塗装やひびを早期に補修することにより寿命を伸ばすことができる。劣化の状況を把握し、財源の優先順位をつけて効果的に補修を行うアセットマネジメントを実行することでインフラの長寿命化が可能になる。
  • アーカイブ 有形・無形の価値ある資源を、デジタル化して保存したデータコンテンツ。デジタル化することによって、ネットワーク等を通じた公開や再利用が容易となる。